テレビ朝日開局65周年記念のドラマとして2024年1月4日に松本清張原作の「ガラスの城」が放送された。木村佳乃と波瑠の共演で見ていた人もあると思う。原作はどうだったか。1962年1月から1963年5月まで「若い女性」に掲載された作品。巨大商社で起こる殺人に関するもので、「・・外観はおりからの朝陽をうけて総ガラスの窓がきらめいている。壮大なガラスの城である。・・」と記載されている。現在の高層ビルならすぐにイメージがわくのだが、1962年当時では商社の力を見せつける建物を示しているようだ。ドラマと原作では現在に置き換えた内容で大きな違いはみられないが、1点現在では聞きなれないタイピストが出てくる。主役の的場郁子の職業が原作ではタイピストとなっている。当然ワープロもないため邦文タイプライターで契約書などを作成する専門職があった時代だ。特に女性の職場として。1962年には西村京太郎もタイピストが出てくる小説を発表している。1962年3月傑作倶楽部「病める心」だ。当時は文書を清書するのに欠かせない職業だったのだろう。1916年の朝ドラ「とと姉ちゃん」にも常子が邦文タイプライターのタイピストとして活躍する姿が描かれているため、覚えている人もあるかもしれない。ドラマでは現代風に、パソコンやITを駆使した職業を中心とした内容になっている。人間の欲望への描き方は、時代がたっても変わっていない。