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岡嶋二人 「99%の誘拐」 [推理小説]

 岡嶋二人さんと言えば、井上泉(夢人)さんと徳山諄一さんの二名による合作で1982年に「焦茶色のパステル」で第28回江戸川乱歩賞を受賞した。この時には、中津文彦さんの「黄金の砂」とともに2作が同時受賞した。作品の選評を読むと西村京太郎さんなど五氏すべてが「99%の誘拐」を推していた。今回は、1988年に第10回吉川英治文学新人賞を受賞した「99%の誘拐」を取り上げたい。

 昭和43年(1968年)の誘拐事件と、その後昭和63年(1988年)に発生した誘拐事件との関連の中で推理が進んでいく。井上さんはコンピュータにも造詣が深かったとのことで、事件発生当時の描き方に感心した。

 昭和43年時では、カナタイプによるカタカナを使用し、オープンリールのテープレコーダーに乾電池、キャプスタンロールに細工して音を出したまま早送りするテクニックなどが描写されている。私も昭和43年当時に乾電池で駆動する3インチオープンリールのテープレコーダーを持っていたため様子がよくわかる。

 昭和63年では、ラップトップ型のパソコンと携帯用の音響カプラーで公衆電話からアクセスすることや、チャットや、「・・キーボードをたたいて文章を入力するとその文章がパソコンで処理されて音声となって出てくる・・」(音響シンセサイザーを利用して入力内容を合成音声として聞かせること)や、コードレス電話(親機に向かって子機が発しているものと同じ周波数の電波を送る、コードレス電話までしか逆探知できない)や、「・・・金属片を上あごの裏側に装着する。息を吹き込むと超音波が発生し送話機の振動版に直接振動を与える。このノイズがパソコンに命令を与える。・・・」、「・・ワープロでタイプされたレポート用紙・・」などの描写が見られる。当時、文献の検索などは音響カプラーで電話回線を通じてホストコンピューターに接続しイライラしながら操作をしていたのを思い出す。コードレス電話は1987年にアナログ方式の使用が開始されたばかりで、我が家では1993年にコードレス電話を購入して家の中や屋外で電話ができ便利なものだと感心したのと同時に盗聴されても仕方ないとの気持ちだったのを思い出した。

 西村京太郎さんは推理小説の中で執筆当時の最新のワープロや電話事情などを織り交ぜた記載をしているが、岡嶋さんも先端の技術をうまく入れ込んで事件に利用している。楽しい読み物だった。


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