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山村美紗24「ろうそく」 [山村美紗]

 フジテレビの人気ドラマ「赤い霊柩車」が1992年の第1話から2023年3月17日の第39話までで終わりとなった。片平なぎさと神田正輝のコンビが長く続いた。ドラマ冒頭の化野念仏寺でのろうそくによる演出にインパクトがあった。特に和ろうそくによる、炎が、ポッポッポッと動く姿がなんともいえない。赤い霊柩車シリーズは39回分もないため、第39話では「紅梅屋敷の殺人」が原作とのことで読んでみた。名探偵キャサリンと恋人の浜口が事件を解決していくもので、小説宝石1992年2月号に掲載された。大阪仏壇と京都仏壇の違いが解決のヒントになる点など放送も原作も同じで、ドラマで確認しなければ仏壇の差を知ることはなかった。ドラマタイトルの「赤い霊柩車」は小説新潮の1992年4月号に掲載されたもので、「紅梅屋敷の殺人」と同時期に執筆されたもの。これを読むと石原明子と黒沢春彦との関係や背景がよくわかる。長くドラマ連載が続いていたため最初に戻って読み直すと背景を思い出す。ポケットベルの使用も記載されているため、「紅梅屋敷の殺人」でよく出てくる電話は携帯電話ではなく固定電話と考えられる。ろうそくの話の予定がちょっとずれてしまった。次回にでもろうそくの話をしたい。最後に、神田正輝さんの元気な姿を期待したい。

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松本清張 「ガラスの城」 [松本清張]

 テレビ朝日開局65周年記念のドラマとして2024年1月4日に松本清張原作の「ガラスの城」が放送された。木村佳乃と波瑠の共演で見ていた人もあると思う。原作はどうだったか。1962年1月から1963年5月まで「若い女性」に掲載された作品。巨大商社で起こる殺人に関するもので、「・・外観はおりからの朝陽をうけて総ガラスの窓がきらめいている。壮大なガラスの城である。・・」と記載されている。現在の高層ビルならすぐにイメージがわくのだが、1962年当時では商社の力を見せつける建物を示しているようだ。ドラマと原作では現在に置き換えた内容で大きな違いはみられないが、1点現在では聞きなれないタイピストが出てくる。主役の的場郁子の職業が原作ではタイピストとなっている。当然ワープロもないため邦文タイプライターで契約書などを作成する専門職があった時代だ。特に女性の職場として。1962年には西村京太郎もタイピストが出てくる小説を発表している。1962年3月傑作倶楽部「病める心」だ。当時は文書を清書するのに欠かせない職業だったのだろう。1916年の朝ドラ「とと姉ちゃん」にも常子が邦文タイプライターのタイピストとして活躍する姿が描かれているため、覚えている人もあるかもしれない。ドラマでは現代風に、パソコンやITを駆使した職業を中心とした内容になっている。人間の欲望への描き方は、時代がたっても変わっていない。

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松本清張 「顔」 [小説]

 テレビ朝日開局65周年記念のドラマとして2024年1月3日に松本清張原作の「顔」が放送された。後藤久美子30年ぶりドラマと武井咲との初共演で見ていた人もあると思う。原作はどうだったかと、読み直してみた。1956年に発表されたため当然時代背景違うのだが、ストーリーもなんだか違うと思ったのだがやはり相違点も見られた。大きな違いは犯人がドラマでは女性だが、小説では男性。目撃者と出会っても犯人だとわかっていなさそうなので、大胆に顔出しをしたのだが、目撃者が、映像を見て犯人の顔を思い出す設定は同じだ。原作では夜行急行げんかいで九州から京都に行くや、為替で旅費を送るなど、今とは違った昭和30年代が出てくる。また、京都での昼食に「いもぼう」が出てくる。海老芋と棒鱈を使用した煮物で、今でも円山公園近くに専門店が何軒かある。昔京都に住んでいたため懐かしくて昨年何十年ぶりかに食べに行った。まさか今回の小説の中に出てくるとは思わなかった。

松本清張は自作解説のなかで、何の学歴も無い若者が世に出るには映画俳優やタレントなどで、それを題材とした。松本清張にとって最初に書いた推理小説的作品で「顔」を含む短編集が、江戸川乱歩が会長をしていた日本探偵作家クラブから、探偵作家クラブ賞を贈られたと、記載している。松本清張にとっては感慨深い一遍なのだろう。

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音楽配信 [夏樹静子]

 西村京太郎や山村美沙の小説には音楽配信に関する内容は無かったように思う。小説現代2001年4月号の夏樹静子原作「不作為の罠」には、アメリカの優れたビジネスモデルの特許を買って、音楽データをインターネットで配信する事業を日本で独占販売する会社、の話が出てくる。調べると、1990年代後半にはアメリカで事業化され、日本でも1997年以降開始されている。日本でも音楽配信が始まり出した黎明期の2001年には小説の中に取り入れられている。短編だが、新しい技術を取り入れた一篇だ。

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