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山村美紗24「ろうそく」 [山村美紗]

 フジテレビの人気ドラマ「赤い霊柩車」が1992年の第1話から2023年3月17日の第39話までで終わりとなった。片平なぎさと神田正輝のコンビが長く続いた。ドラマ冒頭の化野念仏寺でのろうそくによる演出にインパクトがあった。特に和ろうそくによる、炎が、ポッポッポッと動く姿がなんともいえない。赤い霊柩車シリーズは39回分もないため、第39話では「紅梅屋敷の殺人」が原作とのことで読んでみた。名探偵キャサリンと恋人の浜口が事件を解決していくもので、小説宝石1992年2月号に掲載された。大阪仏壇と京都仏壇の違いが解決のヒントになる点など放送も原作も同じで、ドラマで確認しなければ仏壇の差を知ることはなかった。ドラマタイトルの「赤い霊柩車」は小説新潮の1992年4月号に掲載されたもので、「紅梅屋敷の殺人」と同時期に執筆されたもの。これを読むと石原明子と黒沢春彦との関係や背景がよくわかる。長くドラマ連載が続いていたため最初に戻って読み直すと背景を思い出す。ポケットベルの使用も記載されているため、「紅梅屋敷の殺人」でよく出てくる電話は携帯電話ではなく固定電話と考えられる。ろうそくの話の予定がちょっとずれてしまった。次回にでもろうそくの話をしたい。最後に、神田正輝さんの元気な姿を期待したい。

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邦文タイプライター3 山村美紗24 [山村美紗]

 「とと姉ちゃん」では、常子が会社を解雇され、邦文タイプ(和文タイプ)とタイピストが危ぶまれている。その中で、今回は山村作品とタイプライターについて眺めてみたい。

 西村作品では邦文タイプは個人のクセがほとんど出ない等個人を特定出来ない手段としても描かれている。確かに筆跡と違って個人を特定することは難しいため、推理小説としての使い方としては王道の気がするが、使う活字などから、ある程度機械を特定出来るのではなかろうか。

タイプライターでのタイプする機械のクセについて、山村美紗氏の小説では初期の作品から登場する。1970年の江戸川乱歩賞の応募作で原題が「京城の死」だ。「愛の海峡殺人事件」に改題され1984年になって光文社文庫で発刊された。ただ、乱歩賞では最後の5編には残ったものの、江戸川乱歩賞への応募当時は賞の選評で酷評されており、大谷洋太郎氏の「殺意の演奏」が江戸川乱歩賞を受賞している。このような作品だが、その中で、「・・タイプライターには必ずといっていいほど機械のクセがありますので私の手紙を打った機械を見つけようと思います。警察に李さんの家にあるのを調べてもらったら違いました。活字のクセというより機械のメーカーが違うのです。」「・・そのタイプのクセが同じなのです。李の字が摩減しているでしょう。・・」「・・彼の事務所で使っているタイプライターのクセが出ていましたから、・・」と。機械を特定し、誰が使用しているかによって犯人をあぶり出していく。

 さらに山村作品では邦文タイプの変わった使い方が登場する。原題は「虚飾の都」で1979年から1980年にかけて京都新聞に連載され、1984年に文藝春秋社から「扇形のアリバイ」として発刊された作品だ。その中では、「・・外国では男でもタイプを打ちますが、日本では特に邦文タイプの場合は女性が多いんですよ。・・」と日本では女性の職業を意識した表現がある。さらに、「・・タイプアート「タイプで絵を描くんです。主に電動タイプライターを使うんですが、たとえば女という活字を使って女性の顔を描いたりします。同じ活字を何度も重ね打ちすれば絵に濃淡をつけることも可能です。・・」と、タイプライターアートが登場している。今ならパソコンのソフトで出来るのだろうが、実際のタイプを使って絵を創造するのは大変だったろう。1930年代にジュリアス・ネルソンが英文タイプで作成した作品などからより高度なアートとして発展していったものだ。タイプも単なる印字から進化し、それを山村美紗氏はしっかり押さえている。
 英文タイプと違って漢字変換が必要となる邦文タイプは、ワープロ(ワードプロセッサー)が浸透するまでは、まさに職業婦人などの専門職であった。1982年に能率協会から発行された「ワードプロセッサ・ガイド」の創刊号には、ワードブロセッサーは和文タイピスト2人分の働きをするとの記事がある。当時のワードプロセッサーは150万円以上の価格で、まだまだ一般家庭にまで浸透する時代ではなかった。ひらがなカタカナ漢字を組合せて、日本語に優れた表現力を与える邦文タイプライターは1915年から約70年間にわたって便利な印刷機械としての地位を築いていた。確かに日本の十大発明だ。


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山村美紗 23 赤い霊柩車 2 [山村美紗]

 フジテレビの赤い霊柩車シリーズ第6作は1996年10月18日に「婚約者は死者」として放映された。これは、同一タイトルで執筆された1992年の原作によっている。被害者は携帯電話を愛用し、「私が死んだら、携帯電話をお棺の中に入れてね。生きかえったら、電話するから」と。犯人は、被害者の携帯電話を処分せず保管していたためそれが決め手で捕まった。映像では、石原明子役の主演女優片平なぎさが自分の携帯から電話すると犯人の自動車のダッシュボードから被害者の携帯が発見された。原作では犯人の自宅の本箱から発見された。いづれにしても、電話を鳴らすことで携帯の位置を確認している。

 現在でも、携帯の場所がわからなくなると鳴らして場所を確認するのは、よくやる探し方だ。1990年代とは違い今では、GPSを使用した探し方もあるが、携帯各社の記載では数十mの範囲で特定可能とのこと。大体の位置はわかるが、結局は鳴らして探すのが一番だ。この手法は昔と変わらない。携帯電話の発現で、有線の固定電話では無かった推理小説の手法が現れた。例えば、1994年に関西ウォーカーに連載された「結婚ゲーム」では、「・・電話のアリバイは通用しないんですよ。転送電話もあるし携帯電話もある時代ですからね。・・」と、携帯電話の使用で推理小説にも変化が見られることが記載されている。
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山村美紗 22  赤い霊柩車 1 [山村美紗]

 最近、BSフジで山村美紗の赤い霊柩車シリーズの再放送がされた。片平なぎさと神田正輝のコンビが当たり前と思っている人も多いと思うが、石原明子役の主演女優片平なぎさは最初からだが、黒沢春彦役(原作では黒沢秋彦)の神田正輝は第3作からだ。また、山村紅葉は最初からずっと出演している。山村美紗さんは、山村作品を各局でドラマ化するにあたって、山村紅葉の出演を条件にしていたと言われている。

第1作は、1990年4月小説新潮に掲載の「赤い霊柩車」を基にして1992年3月6日にフジテレビで放映され、主演男優は美木良介がつとめた。原作ではポケットベルが登場しているが、ドラマでは登場していない。ただ、当時便利に使用されていたテレホンカードが使える緑の公衆電話が登場している。

第2作は、1990年8月に小説新潮に掲載の「黒衣の結婚式」を基にして1993年6月4日に、主演男優を国広富之にして放送された。原作ではポケットベル、転送電話、自動車電話が登場しているが、実際の放映では、マイクロカセットを使用した留守番電話や携帯電話が登場している。特に携帯電話は、葬儀社専務の秋山隆男役の大村崑がアンテナを立てる携帯電話を使用していた。

第3作は、1992年8月に小説新潮に掲載の「消えた配偶者」を基にして1994年7月15日に、主演男優神田正輝で放映された。原作では携帯電話が登場していたが、放映では、マイクロカセットを利用した留守番電話、コードレスフォン、携帯電話が登場する。狩谷警部をはじめ警官はまだ公衆電話を利用しており、携帯電話は登場しない。1作2作では亭主関白をイメージした春彦だったが、3作では明子に優しい春彦になっていた。

 1987年4月にNTTで始まった携帯電話サービスでは重量約900gと決して携帯とは言えるものではなかったが、1991年4月にアナログ携帯電話ムーバにより重量約230gと、やっと携帯電話と言える代物になった。1993年に契約数が100万台を突破しており、便利な連絡ツールとして認知されて来たのだろう。ドラマで大村崑が使用しているのはこのタイプと考えられ、現在の携帯電話に対してそんなに違和感はない。その当時、新規加入料45800円、毎月の回線使用料が17000円とやはり高価だった。
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山村美紗 21  シャーロット [山村美紗]

 「マッサン」でヒロインを演じたシャーロット・ケイト・フォックスをキャサリン・ターナー役に起用し、山村美紗の「花の棺」を原作としたドラマが、テレビ朝日系列で放映される。「花の棺」は山村美紗が米国副大統領の令嬢としてキャサリンを初めて登場させ、その後のキャサリンシリーズのきっかけとなった小説だ。1975年9月にカッパノベルス(光文社)で発売された。ドラマとしてはテレビ朝日系列で1979年に土曜ワイド劇場で「京都殺人案内・花の棺」として放送されたのが最初だ。

 この小説では山村作品で初めての電送に関する記述がある。電送って何だと言われるかもしれないが、「・・誘拐の恐れのある行方不明者として、模写電送の手配のありました東郷流風氏についてですが・・」と、模写電送の表現で、電送に関する記述がされている。電送とは、写真や絵画や文字などを電気信号に変えて遠方に送り再度元の像に再現する事。山村作品では電送に限らず、新しい技術が積極的に採用されている。

現在に置き換えると、パソコンで合成した画像やスマホで撮った画像をメールで送り、送られて来た画像をスマホかタブレットで眺めることにでもなるのだろう。

電送からファクシミリとして家庭にまで浸透し、固定電話が携帯電話に進化するにはまだ時間が必要だった。そんな40年の時を超えてどのようなドラマとなるのか楽しみにしたい。
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