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パソコン「紀田順一郎2」 [推理小説]

 紀田さんの評論や古書に関する造詣の深さに感心していたが、「オンラインの黄昏」(1984年三一書房刊)ではパソコンについての知識で驚いた。信用金庫のコンピュータシステムの不備をついて金をだまし取ろうとする内容なのだが、それに伴い殺人まで発生する。プログラムやコンピュータに関する文言が多く出てくる。豊富な知識がないと書けない。

 1984年当時のため、初期のパソコン文化や秋葉原の様子も楽しい。小説に登場するコンピュータ関連の用語や商品名がやたら詳しい。私に懐かしい内容もある。PC60の記載では、そういえばNECのPC6001があったなあ。私はPC8001とCRTとプログラム用のテープレコーダーを購入した覚えがある。とてもフロッピーなど購入できず、カセットに入ったゲームプログラムをパソコン立上げごとにインストールして、今から思えば単純なゲームでも楽しく遊んだ。また、主にBASICで組んだプログラムが動くと感激した。小説ではCOBOLなどが出てくるが、学生時代にはマークした多量のカードでFORTRANを走らせたり、パンチした紙テープのプログラムを走らせたり、を思い出した。具体的商品名としてはSORDのM20やサンヨーのPHC-800などが出てくる。当時の秋葉原の様子も懐かしい。秋葉原、秋葉(アキバ)が一般的なのだろうが、どういうわけか自分的には葉原(ハバラ)と呼んでいた。おそらく吉祥寺を祥寺(ジョージ)と呼んでいたためだろう。1970年代にはオーディオ関連で秋葉原のラジオ会館等をうろうろ。1980年代になるとパソコンでうろうろ。当時は枠もなくむき出しのCRTが売っていた。感電などしないのだろうか、買ってもどうして持って帰るのだろうかなど現物を見ながら思ったものだ。世代が違うため現在の秋葉原に行くことも無くなってしまったが、またオーディオに興味を持ちだしたので、パーツを求めて今浦島の秋葉原をうろうろするかもしれない。推理小説としてよりも1980年代の懐かしい時代小説として読ませてもらった。

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古書 [推理小説]

 古書店を営む傍ら文筆生活を行っている出久根達郎さんの「あったとさ」(文春文庫)を読んでみた。実際に古書店を営む人の記述のため、なるほどこのようにして古書の発掘などをしているのか、と興味をもった。この中の1993年9月号オール読物「あったとさ」などは楽しく読めた。さらに古書店繋がりで紀田順一郎さんの小説に。古書店を舞台とする推理小説を書いているが、1999年「第三閲覧室」を読んだ。本を保管している図書室の燻蒸処理を利用した殺人事件で燻蒸処理中の部屋に閉じ込められて死亡する。本についた虫などを駆除するのだから当然人間にも害のある薬剤を使用する。調べると今では人間にやさしい薬剤も開発されているとのこと。昭和初期の古書を、印刷、活字、紙、材料、綴じ糸、ニカワなどを探して再現偽造する中での殺人事件だ。当然本の知識がないとできないもので、古書を知っている紀田さんならではだろう。古書より古本、古書店より古本屋の表現のほうがしっくりくるのだが、どうしても安物汚いとのイメージあるようだ。

 本については、本の表紙を製造する会社に勤めていたこともあって、関連する話を聞いたことがある。本1冊を作るにしてもかなり大変な作業を伴う。本の装幀に関連しては「つつんで、ひらいて」(広瀬奈々子監督2019年)という映画もあるため興味があれば見ると面白い。古書の思い出としては、祖父が1920年に翻訳した書籍があったのだが、国会図書館に蔵書としての記載はあるものの現物がない。以前は結構このような書籍があったとのこと。どうしても見つからずネットで検索したことがあった。一冊見つかり、数か月後にもう一冊でてきたので計2冊を手に入れることができた。便利な時代になったものだ。1冊は国会図書館に納本して1冊は自宅に保管した。話では1-2年でデジタル化されるだろうとのことだったが5年たってやっとデジタル化された。傷みやすい本などから優先的に処理するとのことなので時間が掛かるのは仕方ないと思っている。国会図書館限定でのデジタル閲覧だが、とにかく誰にでも見られる状態にしただけでも良かったと安堵している。暫く紀田順一郎さんの本も読んでいきたい。

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岡嶋二人 「クラインの壺」 [推理小説]

 1989年出版、岡嶋二人での最後の作品だ。新しいゲームをテストするとの話で始まった実験だったが、実際は、人間のコントロールを目指したプログラム開発にあたって問題点の修正を、モニターを使ってやっていく物語だ。新しいプログラムの開発修正などは現在でも通じるような描写だった。一方、1980年代当時の状況も描いている。「留守録付きのテレフォン」「ワープロで打った事柄」「駅で券売機に100円玉を入れている」「留守番電話のテープ」など、スマホ、携帯電話などなかった時代、私にも状況がよくわかる。現在は、テープを使った留守録電話は生産していないようだが、券売機では当然現金で切符を購入できる。余談だが、1989年当時スイカ等ICカードは無かったが、1985年から磁気カード方式のオレンジカードは使用されていた。

 この作品の後、岡嶋二人はそれぞれの道を歩んでいくことになる。


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岡嶋二人 「99%の誘拐」 [推理小説]

 岡嶋二人さんと言えば、井上泉(夢人)さんと徳山諄一さんの二名による合作で1982年に「焦茶色のパステル」で第28回江戸川乱歩賞を受賞した。この時には、中津文彦さんの「黄金の砂」とともに2作が同時受賞した。作品の選評を読むと西村京太郎さんなど五氏すべてが「99%の誘拐」を推していた。今回は、1988年に第10回吉川英治文学新人賞を受賞した「99%の誘拐」を取り上げたい。

 昭和43年(1968年)の誘拐事件と、その後昭和63年(1988年)に発生した誘拐事件との関連の中で推理が進んでいく。井上さんはコンピュータにも造詣が深かったとのことで、事件発生当時の描き方に感心した。

 昭和43年時では、カナタイプによるカタカナを使用し、オープンリールのテープレコーダーに乾電池、キャプスタンロールに細工して音を出したまま早送りするテクニックなどが描写されている。私も昭和43年当時に乾電池で駆動する3インチオープンリールのテープレコーダーを持っていたため様子がよくわかる。

 昭和63年では、ラップトップ型のパソコンと携帯用の音響カプラーで公衆電話からアクセスすることや、チャットや、「・・キーボードをたたいて文章を入力するとその文章がパソコンで処理されて音声となって出てくる・・」(音響シンセサイザーを利用して入力内容を合成音声として聞かせること)や、コードレス電話(親機に向かって子機が発しているものと同じ周波数の電波を送る、コードレス電話までしか逆探知できない)や、「・・・金属片を上あごの裏側に装着する。息を吹き込むと超音波が発生し送話機の振動版に直接振動を与える。このノイズがパソコンに命令を与える。・・・」、「・・ワープロでタイプされたレポート用紙・・」などの描写が見られる。当時、文献の検索などは音響カプラーで電話回線を通じてホストコンピューターに接続しイライラしながら操作をしていたのを思い出す。コードレス電話は1987年にアナログ方式の使用が開始されたばかりで、我が家では1993年にコードレス電話を購入して家の中や屋外で電話ができ便利なものだと感心したのと同時に盗聴されても仕方ないとの気持ちだったのを思い出した。

 西村京太郎さんは推理小説の中で執筆当時の最新のワープロや電話事情などを織り交ぜた記載をしているが、岡嶋さんも先端の技術をうまく入れ込んで事件に利用している。楽しい読み物だった。


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森村誠一 「新幹線殺人事件」 [推理小説]

 森村さんと言えば角川映画「人間の証明」が浮かぶが、「新幹線殺人事件」60万部販売とのこと。森村さんの公式サイトによれば、1969年「高層の死角」で第15回江戸川乱歩賞を受賞したものの、鳴かず飛ばず状態のときにカッパノベルスから話しがあって執筆し、結果1970年に出版された。

 今、2025年の大阪万博が何かと話題になっているが、この推理小説では前の大阪万博のプロデュースや当時の芸能界事情を絡めた事件が題材になっている。時代背景を得たもので、販売数が伸びたのもうなずける。人類の進歩と調和、奇抜な形状のパビリオンや無線電話の実演や動く歩道や太陽の塔や月の石など、見に行ったのを覚えている。今回の万博をめぐっても激しいプロダクションによるプロデュース競争があるのだろうか。

 小説の中では新幹線からかけた電話のアリバイをどのようにつぶすかがカギになっている。今では携帯電話があるため電車の中から個人が誰にでも簡単に電話をかけられる。しかし、当時は東海道新幹線から電話をかけるには、乗務員に申し込んで電話をかけてつないでもらう必要があった。公衆電話と言ってもダイヤルがある訳ではなく、お金を入れれば簡単に電話をかけられるわけではなかった。またかけられる場所も限定され、東京、横浜、名古屋、京都、大阪に限られていた。当時東京三多摩地区に電話を頼もうとしたら、東京で電話ができるのは03局番の地域だけです、と言われた覚えがある。また、新幹線に乗っていると電話の呼び出し放送があったのも覚えている。現在は、コインやカードの公衆電話も廃止されている。時代はどんどん変化している。1970年の大阪万博で無線電話を見て驚いた時は新幹線からの電話は乗務員につないでもらっていた、隔世の感がある。

 小説では、殺人事件とトリックを楽しんだ。昔、カッパブックスを買うと一気に読んだのを思い出してしまった。

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