音楽配信 [夏樹静子]
夏樹静子5 自動車 [夏樹静子]
夏樹静子4 蒸発3パテント [夏樹静子]
夏樹静子さんの「蒸発」には、パテントとの表現が出てくる。「・・パテントというのは、丹野鋼材が東洋製鉄に売ったプレスフレームのパテントのことですか・・」のように殺人を犯す動機として使用されている。
パテント特許といえば、TBSドラマ「陸王」で登場するシルクレイの特許や「下町ロケット」での特許紛争などを思い出すが、1972年発行の「蒸発」で登場させた夏樹さんの見識の広さも素晴らしい。西村京太郎さんや山村美沙さんの作品ではパテントや特許の登場を記憶していない。斉藤栄さんの1975年毎日新聞社刊の「ダイヤモンドと暗殺 上 暗殺編」に「・・ぼくの理論とアメリカのパテントが組合わさっているんでほかの人には絶対に真似ができない仕掛けですよ・・」との記載がある程度。「蒸発」だけを読んでもいろんな表現が気になってしまう。
あと、電話に関していうと、「・・別府から福岡はダイヤル即時で繋がるのだが、市外通話のため「松風」ではあとで通話料金を知らせてもらうため、いったん100番に申し込んで待つという方法をとったからですね・・」と。今ではダイヤル即時が当たり前の通話を100番での申し込みと差別化を図っている。1972年当時の時代を生きていた人ならわかるだろう。ひょっとすると現代人にはダイヤルとは何だ、とまで言われるかもしれないが。
表現を考えながら小説を読むのも一興ではないか。夏樹静子3 蒸発2テレタイプ [夏樹静子]
夏樹静子さんの「蒸発」は1972年カッパノベルスで発行された。この中では「・・通信衛星経由ではいってくるニュースのテレタイプをまずボーイが抵当な長さにちぎってデスクにとどける。・・テレタイプのカチカチという機械音だけが途絶えることなく響いている・・」と、情報の連絡手段としてテレタイプが登場する。
テレタイプは1910年代に開発され、1928年テレタイプ社の設立により一般化した名称で、1931年の米国ATT社のサービスによりテレックスと呼ばれるようになった。送信側のタイプで印字した内容がそのまま受信でき、文字情報を瞬時に伝達できる画期的な情報伝達手段だった。
このテレタイプは夏樹さん以外の西村京太郎さんや山村美沙さんの作品にも同時代に、初めて登場する。西村作品では、1971年カッパノベルスで発表された「ある朝海に」で「・・部屋の隅にあるテレタイプが乾いた音を立て始めた。ハンセンは椅子から立ち上がってタイプされていく文字を読んだ・・」との記載がある。また山村作品では、テレックスとしての表現があり、1971年6月に小説サンデー毎日に掲載された「死体はクーラーが好き」に「・・刻々と市況が超短波ではいり、テレックスが文字を刻む・・」との記述がある。
残念なことに、テレタイプはコンピュータの発達とともにその役目を終えていくことになる。1970年代に、紙テープとパンチ機を備えた端末を利用してミニコンでデータ処理をしていたことを、懐かしく思い出した。