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本を作る3 本 [本]

 稲泉連さん著の(「本を作る」という仕事)を読んでいると、印刷用紙に関する文が出てくる。

以前から酸性紙による紙の劣化は知っていたが、中性紙への転換にあたっての技術開発など出版物の根本にかかわる問題についての努力が記載されていた。

印刷用紙ばかりでなく読者を一瞬で引き付ける表紙の装丁についても記載がある。ブックデザイナーの日下潤一さんが手がけた、関川夏央著「国境を越えたホームラン」。表紙に細かな木材を漉き込んだ「ミューズカイゼル」(繊維分が和紙のようにちりばめられた紙)を活かすこと。しかし裏表紙にその表紙を使用すると写真印刷で繊維カスが入り込んでしまう。そこで、株式会社竹尾が販売している「パミス」という紙にカイゼルを印刷して表表紙にカイゼルの調子を入れ、裏表紙では写真の印刷を可能にしている。紙に紙を印刷することでいいとこ取りができるとのこと。本の装丁にもいろんな工夫がされている。

小説の内容も当然重要だが、読者をひきつけ、目で楽しんで、触って本のすばらしさを表現する表紙ももっと注視されてもいいのではなかろうか。カズオ・イシグロ氏原著、土屋政雄氏翻訳で早川書房から発刊された「わたしを離さないで」。電車でカセットテープが描かれた表紙をみて興味を持ち読んでみたものだ。本の表紙素材や装丁が読者をひきつける。装丁を行うにあたって印刷適性や箔押し適正や強度などを保持した本の表紙素材が力を発揮する。手軽に読める文庫本もいいが、楽しい本も開いてみたいものだ。


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本を作る2 本 [本]

稲泉連さん著の(「本を作る」という仕事)を読んでいると、文字の基本活字に関する記述に出会った。

 日本語のフォントについては明朝体やゴチック体などは知っていたものの、東京築地活版製造所作成の築地体(株式会社モリサワの登録商標)や現在のDNP(大日本印刷)である秀英社作成の秀英体(DNPの登録商標)などを意識したことはなかった。特に秀英体については100年目の平成の大改刻としてDNPの事業として行われていたことなどが記載されていた。DNPのサイトで確認すると創業130年の記念事業の一環として行われたことなどの記述があった。本には、大改刻にかかわった伊藤正樹さんからの話の内容が記載されており、活字の復刻作製は活版印刷時代から現在のデジタルフォントまで100年以上にわたる印刷の歴史をそのまま背負った作業でもあったようだ。

 活字離れが叫ばれ本の出版販売数は減少しているが、ウエブでの情報ばかりでなく本を読んで筆者からの情報や主張を直接吸収すると、今まで知らなかった知識が蓄積されるのではなかろうか。もっと本を読んで欲しいものだ。


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本を作る1 [本]

 筑摩書房から2017年1月に出版された稲泉連さん著の(「本を作る」という仕事)を読んだ。2014年から2016年にかけて筑摩書房のPR誌「ちくま」に連載された内容を加筆修正したものだ。

 本の作り方などを書いた本は読んだことはあったが、出版についてフォントから校正校閲など、裏話を含めて取材し掲載されている点など楽しく読むことができた。

 この本の中に校閲という仕事の大切さ、新潮社が創業者の佐藤義亮さんからの伝統で校閲に確固たる信念をもって行うことが記載されていた。2012年に新潮社を退職した矢彦孝彦さんによれば場所や時間や時代背景を一致させるため小説の中での校閲が重要で矛盾点を見つけて作家に指摘検討することが校閲者として大切のようだ。

 作家の例として五味康祐さん、井上ひさし、松本清張、司馬遼太郎などそうそうたる作家によるそれぞれの校閲に対する姿勢が面白い。

 それにしても9月25日の新潮社からの発表にはあきれ返るばかりだ。性的少数者への報道に関連して「新潮45」を休刊するとのこと。校閲の新潮社は素晴らしい出版社だと感心していただけに。草葉の陰で佐藤義亮さんがどう感じられるのか、過去に戻れるものならぜひコメントを頂きたいものだ。


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