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芥川賞11 「首里の馬」 [芥川賞]

第163回芥川賞が文藝春秋2020年9月号に掲載された。新潮に発表された高山羽根子さんの「首里の馬」と、文藝夏季号に発表された遠野遥さんの「破局」の2作。今回は「首里の馬」を取り上げたい。

沖縄を舞台に、未名子の行動が記載されているのだが、読んでいてくたびれる、との印象をぬぐえなかった。SDカードやスマートフォンなどについては、説明もなく当たり前の物として使用されるのだが、カセットテープに関しては、あまりにも古いデータの記録再生媒体のためか「カセットテープ用のプレーヤー」について詳しい説明がされている。

「・・デジタル表示の下には右側に多数の小さな穴が規則的な間隔で開いていた。たぶんこれはスピーカーだろうと未名子は思う。もう片方にある薄いグレーのプラスチック窓は、適当に押したいくつめかのボタンで、上部が傾くようにして開いた。そこまでは想像どおりだったけれど、意外なことに中にはすでに、なにかが入っている。資料館にあったものと同じ、プラスチックでできた薄い直方体の、細かい部品が組みあげられた軽い塊だった。中に入っていたカセットテープを引き出してテーブルの端に置く。やっぱりこれはカセットテープ用のプレーヤーだ、と未名子は確信する。・・」

素晴らしい描写なのだが、ある年代以上の私にとってはカセットテープやそのプレーヤーについても、当たり前の道具として扱ってほしかった。一つの物の形状動作などをいろんな方向から克明に文字として表現するのは、読んでいて楽しいのだが、私の年代からは、よりにもよってカセットテープ用のプレーヤーかよ、と言いたくなる。ある意味キーになる物のため、あえてしつこめに記載してみました、とでも解釈しておこう。

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