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西村京太郎とファクシミリ 其の参 [西村京太郎]

  以前電送の話をした時に電送は警察で指紋や写真を送るイメージがあり、犯罪捜査のイメージが強いと記載した。西村作品でも、犯罪捜査にまつわる記述が多い。一方ファクシミリは企業や商店や家庭に普及して手軽に使用出来る文字や図面などの送信手段との感覚がある。しかしルーツは同じだ。
  ファクシミリの歴史については、と調べてみると、画像電子学会が創立25周年を記念して1997年に発行した「ファクシミリ史」に詳しい。1948年頃に警察通信用に電送テストが行われ、指紋伝送への利用が計画され、1952年には全国に国警ファクシミリ回線網が完成された旨の記載がある。また、1972年のファクシミリ送受像機の約7%が警察の使用となっており、そのためか電送というと指紋や犯人の顔写真の通信手段とのイメージから離れない。国鉄でも1956年頃から貨車組成表への電送利用などのためにシステム開発がされ、その後実用化されていった。
  さて、1984年に野生時代の連載された「特急白鳥十四時間」では「・・女の写真は新潟県警に電送されるので・・」と写真については電送の表現をし、「・・君たちが調べたことを文章にして、それを秋田県警にファクシミリで送るんだ。・・」と文章についてはファクシミリの表現をしている。さらに1985年に週刊ポストに連載された「狙われた寝台特急さくら」でも写真は電送、文字はファクシミリと使い分けられている。1986年に小説現代に連載された「寝台特急あかつき殺人事件」では「・・被害者の指紋を警視庁に電送した。・・」と指紋についても電送となっている。
  しかし文字でも電送の表現がされており、1982年に発表された「幻の特急を見た」では「・・その宿泊者カードは静岡県警から電送されてきましたが、・・」の表現がある。1986年週刊明星に連載された「伊勢志摩に消えた女」では「・・問題の男の絵がファックスで東京の捜査本部へ送られて来た。橋本はファックスで送るために鳥羽の郵便局まで行ってくれたのである。・・三重県警には西尾あや子の写真を何枚か電送した。・・」の表現がある。
  これらの表現から、警察通しの連絡には電送、警察以外への連絡にはファクシミリの表現を使っているのではと推定されるのだが・・。
  ところが1991年発行の「志賀高原殺人事件」では「・・その時の調書の写しなどがファックスで送られて来た。・・写真はすぐに電送しますよ。・・」と警察間であってもファックスの利用がみられる。1995年に発行された「十津川警部雪と戦う」には「・・桜井由紀の写真がホテルに電送されてきた。FAXを使用したのでシロクロだがはっきりしたものだった。・・」と写真電送とFAXの両方が表現されている。1998年小説現代に連載された「上越新幹線殺人事件」では「・・上越新幹線が停車する駅にも太田の顔写真を電送してもらうことにした。・・」と警察以外で写真は電送となっている。
  最近では2007年問題小説に連載された「逃亡海峡」に「・・二人の写真は電送しますから・・」と電送が使われている。
  西村先生としては、電送として実用化された警察やJRなどについては指紋や写真の送受信に電送の表現を使用し、文字や絵については警察間であってもファックスの表現をしているのでは、と勝手な解釈をしておこう。
  よくも色々記載して論評したものだと自分でも驚くばかりだ。
 さすがに今回はこのあたりで止めておこう。
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