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尺貫法  鮎川哲也4 [鮎川哲也]

 鮎川作品には、「弱ったな。グラムで書いてあるんで判らない。女房は百匁と云ったんですがね。」「それじゃ四百グラムだ。去年の秋からいっせいに変わったんだよ。切り替え当時はなれない主婦が泣きごとを云っていたが、いまごろ亭主がまごつくのは滑稽だな。」との文章が出てくる。これは「愛に朽ちなん」という短編小説で宝石の1958年3月号に掲載されたものだ。

 「匁」を「もんめ」と読めただろうか。バカにするな、との方にはあしからず。1951年6月7日に計量法が公布され、その日を記念して6月7日が計量記念日とされた。1958年12月31日をもって尺貫法の使用が禁止され罰則まで設けられた。その当時庶民がなれ親しんでいた匁は、1893年(明治26年)1月1日に施行された度量衡法に量の単位として記載されており、国際キログラム原器を基準にして15/4kgとなる3.75kgを1貫とし、その1/1000の3.75gを1匁としている。使い慣れていた重さや長さの単位が突然変わるため、まごつくのも当然だったろう。ちなみに、現在の5円硬貨が1匁になっている。

 昭和26年の計量法では、第3条第2項に、「質量の計量単位は、キログラムとする」と記載されており、第10条第1項には「・・法定計量単位以外の計量単位は、取引上又は証明上の計量に用いてはならない。・・」と記載され、第235条には、「第10条第1項・・の規程に違反した者は、5万円以下の罰金に処する。」と記載され罰則規定まであった。これでは、庶民も従わざるを得ない。

 時を経て、1992年には、国際単位系(SI)に対応するため、計量法が改正され、施行された1993年11月1日にちなんで計量記念日が6月7日から11月1日に変更された。記念日が変更されたとは知らなかった。相変わらず、第3条に質量の単位としてはキログラム、グラム、トンが記載され、第8条では法定計量単位以外は取引上又は証明上の計量に用いてはならない旨の記載がされ、第173条には違反すると50万円以下の罰金となっている。

 そうは行っても「匁」は単位として現在でも使用されている。真珠の質量は「もんめ(momme)」が国際単位として使用されている。これは日本での真珠養殖を成功させた御木本幸吉氏のおかげだろう。
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